ダウ理論では、株価上昇に対する要因として高値更新よりも実は「安値更新(安値の切り上げ)」の方が重要なこと、
また株価が上昇しているのに「なぜダウ理論では下降(売り決済)…!?」と定義するときがあるのか?
この第2部【ダウ理論の本質編】ではそれぞれのダウ理論のメカニズムを探っていきます。
【ダウ理論の本質編】の理解を深めるには、ダウ理論を使った売買手法についての記事である第1部【ダウ理論・基礎編】も参考になります。
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Contents
ダウ理論の本質と理解
ダウ理論と上昇・下降トレンドの関係
※株価は中長期においては上下に波を打ちながら上昇することが多く、
単一的(斜め横一直線)な方向への大きな上昇は難しい
中長期に渡り、株価の大きな上昇をチャート上で表すと、
2本の斜めのラインの間を株価は上下に移動しながら
最終的な上昇が達成されていることを多くの個別銘柄のチャートから見つけることが出来ます。
この2本のラインは支持・抵抗ライン
(またはサポート・レジスタンスライン)と呼び、
お互いに平行、または平行に近い場合が多く、
トレンドラインであったりします。
(∴チャートソフトには、トレンドラインに対してのコピー機能が付属している場合があるのはこのような理由からです)
この支持・抵抗ラインが共に上向きの場合、
株価の推移が上昇相場にあることから上昇トレンドと呼び、
株価はこの上昇トレンドを形成する支持・抵抗ラインの内側に対して
上昇・下降を繰り返し波を打ちながら、中長期に渡って最終的に大きく上昇して行きます。
この上昇・下降を繰り返すという株価の動きは、投資家の株式に対する多様な思い(買いたい人がいて、同時に売りたい人もいる)が、
投資に反映されながらも、最終的に買いの方が売りよりも、強くなった結果です。
上昇トレンド内の株価の動きをみると、
ほとんどが繰り返されるチャートレベルダウ理論上昇成立の更新により、株価が上昇していることがよく分かります。
株価は、単一的に大きく上昇するのではなく、
チャートレベルダウ理論のように上がったり下がったりを繰り返しながらも、
同時に高値・安値が切り上がっていく動きが大きな株価上昇には不可欠な要因ということが分かります。
また、トレンド内での株価のこのような動きには、上昇途中において多くの売買のサインが発生しています。
上昇トレンド・下降トレンドは、共にトレンド内のローソク足の高値と高値、安値と安値を結ぶ2本のラインによって形成されていることから、
(高値と安値の連動からなる)ダウ理論とは密接に結びついているのです。
またその内容(株価の動き)は、株価の安値・高値の切り上げによるチャートレベルのダウ理論上昇成立を何度か更新させながら上昇トレンドを形成している場合が多い。
では、この上昇トレンドの内部形成がチャートレベルのダウ理論上昇であるならば、ダウ理論上昇を成立させてくる要因は何でしょうか?
その要因を理解することで、株式の低位置での買いポジションが可能となり利益を出すことが出来るようになります。
投資での逆張り手法というものです。
株価上昇の要因とは?(9つのチャートパターンから)
前回では、株価が大きく上昇するにはダウ理論上昇成立の更新が不可欠であることが確認できました。
その大きな株価上昇のきっかけや土台となる要因について考えていきます。
投資家であるなら誰でもこれから上がりそうな株を安い時に買いたいと思います。
しかし株式に対して株価の安い時でも高値に意識を向けるのではなく、安値に対して目を向けてください。
それは、安値が切り上がって来ないと高値の更新だけでは株価の大きな上昇は見込めず、安値が切り下がってしまえば高値の更新は難しくなるからです。
では、「なぜ安値に意識を向けるのか?」、「なぜ安値が切り上がらないと株価が上昇しづらいのか?」
これから一緒に検証していきたいと思います。
株価の動きは、基本上昇・持ち合い・下降のどれかに当てはまります。
高値と安値に対して切り下げ・横向き・切り上げから成る9つのチャートパターンの中から
株価が上昇しやすいチャートパターンを検証していきます。
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↓安値切り下げの3つのパターン①②③です。
① 安値切り下げ・高値切り上げ
安値切り下げ高値切り上げの三角持ち合い(ラッパ)のパターンです。
この場合、持合いが長く続き株価の上下の幅が広くなっていくと、
だんだんと安値から高値への上昇による高値更新は、難しくなっていきます。
いずれ持ち合いが崩れ株価は上下どちらかに推移します。
結果…
- 株価は上昇・下降どちらの方向にも動く可能性がある
では、株価は今後どのように推移して行くことで上昇していくでしょうか?
株価上昇による高値更新は安値が切り上がることで上昇して行くと考えられます。
安値を切り上げることでチャートレベルダウ理論上昇成立後に株価が上昇するパターンになります。
(黄色いライン以降はチャートレベルダウ理論上昇が成立しています。)
①A
② 安値切り下げ・高値平行
これは下降しやすいパターンです。
これから先、株価の上昇は難しくなっています。
また、この形は売り(カラ売り)でよく使われるパターンです。
結果…
- 株価は比較的下降しやすい
③ 安値・高値ともに切り下げ
これはダウ理論下降ですので売りのパターンになります。
結果…
- 株価は下降相場にある
以上が安値切り下げの3つのパターンです。
↓次は安値が平行の3つのパターン④⑤⑥です。
④ 安値平行・高値切り上げ
高値は更新していますが、この状態が長く続き株価の上下の幅が広くなっていくと、だんだんと高値更新は難しくなってきます。
今後、高値更新をしていくには、下図④Aのように、安値が切り上がらないと上昇は難しいと考えられます。
安値を切り上げることでダウ理論上昇成立後に株価が上昇するパターンになります。(黄色いライン以降はチャートレベルダウ理論上昇が成立しています。)
④A
結果…
- 株価は比較的上昇傾向にある
⑤ 安値・高値ともに平行
チャート全体では(BOXと呼ばれる)持ち合いになります。
この場合、今後持ち合いが崩れ株価は上下どちらかに推移します。
結果…
- 株価は上昇・下降どちらの方向にも動く可能性がある
⑥ 安値平行・高値切り下げ
この形は売り(カラ売り)でよく使われるパターンです。
株価が、安値の平行ラインを割ってくると、チャートレベルダウ理論下降が成立してきますので株価上昇は難しいです。
結果…
- 株価は下降しやすい
以上が安値平行の3つのパターンです。
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↓安値の切り上げの3つのパターン⑦⑧⑨です。
⑦ 安値切り上げ・高値切り下げ
これは三角持ち合い(逆ラッパ)のパターンです。持ち合いが崩れると↓⑦Aのように株価は上にも下にも推移する可能性があります。
⑦A
株価が三角持合いから脱して上下すると、小さなダウ理論上昇、又はダウ理論下降が成立する可能性があります。
結果…
- 株価は上昇・下降どちらの方向にも動く可能性がある
⑧ 安値切り上げ・高値平行
これもよくある買いのパターンですが、株価が高値を抜けるのはそれほど難しくなさそうです。
また抜けてくるとチャートレベルダウ理論上昇成立になります。安値が切り上がっている分、高値更新が達成し易いのです。
結果…
- 株価は上昇しやすい
⑨ 安値・高値切り上げ
上昇トレンド内でのチャートレベルダウ理論上昇による株価上昇
結果…
- 株価は上昇相場にある
以上が安値切り上げの3つのパターンです。
(結果)上昇しやすいパターン
結果
- 上昇しやすいパターン →④⑧⑨
- 上下どちらへも動きやすいパターン →①⑤⑦
- 下降しやすいパターン →②③⑥
以上の9つのパターンから分析した結果、上昇しやすいパターン④⑧⑨に共通することに安値切り上げ(⑧⑨)、または安値平行(④)があります。
よって株価上昇に対する最初の要因は、「安値の切り上げ」ということが理解できます。
株価の上昇には高値よりも安値に目を向ける理由が理解できたと思います。
更に、上昇しやすいパターン④と⑧のチャートを見比べて下さい。
一般的には④のチャートの方が高値を更新し続けているので更なる株価の上昇が期待できそうに思えますが、
今後④Aのように、安値が切り上がっていかないと、更に株価が上昇することは難しく、
また⑧のチャートのように高値は平行ですが、安値が切り上がることで今後の高値の更新が見込めることから、
株価上昇の第一段階では安値の切り上げの方が、高値の切り上げよりも重要で、
これからの株価の上昇の要因に繋がりやすいとも考えられるのです。
※↓株価上昇へ可能性のあるチャートパターンの優劣になります。
- 高値…平行(横向き)、切り上げが望ましい
- 安値…切り上げ
※また、安値が切り上がるということは、株価を支えるだけではなく、後押しすることで、株価の上昇をさらに促していることが、①A④A⑦A⑧のパターンから理解できます。
※以上の考え方から、株価上昇とは安値の切り上げが第一条件になります。
(⑧のチャートはダウ理論上昇に近い持ち合いと言えるでしょう)
安値切り上げの本質をつかむことで、投資・トレードに役立てることができるよう必ず理解してください。
上昇相場の判断要素
では、なぜダウ理論上昇が定義されることで、上昇相場と判断できるのでしょうか?
前回の9つのチャートパターンから株価上昇には安値の切り上げが要因の1つと理解できましたがダウ理論上昇成立のもう1つの要因である高値更新(高値切り上げ)を考えていきます。
上昇する株価をチャート上で説明すると、まずAの株価から買いが入ることで
Bの株価まで上昇します。
そして投資家が利益確定のため一旦売り決済が入り株価が下降。
その後株価が前の安値Aを割らずにCの株価での割安感と、
一度Bの株価まで上昇した実績も手伝い再度投資家から買われることで、
Dの方向に向かって株価は上昇しています。
では、投資家が株式に対し“上昇相場に入った”と判断してくる要因は何でしょうか?
どんなにその株式が興味を持たれて上昇しそうな株式であっても、実際に株価が上昇するような数値的な結果(実績)でしか投資家は株式に対する分析や判断はできません。
株価上昇には、第一段階として安値の切り上げが条件だということが9つのパターンから理解できましたが、
この場合Cの株価はAの株価に対して切り上げていますので株価上昇への第一段階はクリアしています。
しかし投資家は安値を切り上げただけでは上昇相場に入ったと判断するでしょうか?
一般的にはあまり安値には意識していないのが現実です。
投資家が株式に対して現実的に上昇相場に入ったと判断できるのは安値の切り上げではなく、
高値の更新によるものです(この場合、株価が前の高値Bを更新した時になります)。
一般的に株式に対して興味を持ち購買意欲を掻き立てられる要因は高値の更新です。(毎日のように高値更新、株価上昇率、ストップ高などがニュースで流れるのはそのためです)
よって、第一条件である安値切り上げと高値切り上げ(高値の更新)の連動から、株価が上昇相場に入ったと判断されるのです。
これがチャート上においてダウ理論上昇成立の形を成している理由です。
安値と高値のそれぞれの考え方を用いることで、ダウ理論上昇が成立後、株価が上昇相場に入ったと定義される意味が理解できたでしょうか?
↓※ダウ理論上昇成立=上昇相場の2つの要因
・第一段階…
- 9つのパターンから安値の切り上げが株価上昇の第一条件
・第二段階…
- 株価が前の高値を更新(高値の切り上げ)する数値的な結果
以上の安値と高値の同時切り上げという、第一段階と第二段階を踏まえることで、株式が上昇相場に入ったと判断され、その内容がチャートレベルダウ理論上昇成立の形になるのです。
チャートレベルダウ理論の本質が理解できたところで、今度はローソク足レベルダウ理論の本質について理解していきます。
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ローソク足で考えるダウ理論とトレンドの関係
ローソク足レベルダウ理論・定義の本質
なぜ、「ローソク足レベルダウ理論上昇が成立することで上昇相場と定義され、下降が成立すると下降相場と定義されるのか?」一緒に考えていきます。
2つのローソク足を比べた場合も、チャートレベルの時と同様に、高値と安値同士を結んだお互い上向きの支持・抵抗ラインから、小さな上昇トレンドを形成しています。
※投資期間の範囲の設定によりトレンドの大きさがきまり、基本的には投資期間を長く見る程に大きな上昇トレンドを考え、投資期間を短く見る程に小さな上昇トレンドを考えていきます。
チャート上の大きな上昇トレンドの例から、2つのローソク足からなる小さな上昇トレンドの例へと、段々と上昇トレンドを小さく考えていくことで、ローソク足レベルのダウ理論の定義への理解を深めていきます。
中長期の投資の場合
中長期(約6カ月~1年半)での投資期間の相場を考えた場合です。
大きなトレンドを例に見ていきます。
上向きの上昇トレンド内で株価がチャートレベルダウ理論上昇を成立させながら、大きく上昇していますが、
その後、下降することで株価が支持ラインを割り、下向きの下降トレンド内を推移しているのがわかります。
株価の方向性は、トレンド内のローソク足の、陽線・陰線・ヒゲの長さには関係なく、あくまでもローソク足の高値と安値同士を結んだ支持・抵抗ラインで形成されるトレンドの向きによるものです。
トレンドの向きは、お互いの支持・抵抗ラインが切り上げの上向きなら上昇相場、切り下げの下向きなら下降相場となり、その他は持ち合い相場となります。
株価が、下向きの下降トレンド内でチャートレベルダウ理論下降を成立させ下降相場となることから、売り決済となりますが、同時にトレンドの向きも下向きなので下降相場となり売り決済と考えることができます。
※ポジショニングに関しては、ダウ理論と同時に、トレンドの向きも重要になります。
中期の投資の場合
今度は、中期(約3日~1カ月)での投資期間の相場を考えた場合になります。
スイングトレードがその例になります。
先ほどの中長期で考えた上昇トレンド内にある、もう少し小さい上昇・下降トレンドを同じチャートの(9202 ANA)から見ていきます。
中長期で示した大きな上昇トレンド内にも小さな上昇・下降トレンドがあり、株価は支持ラインを割ることで上昇トレンドを離れ、下向きである下降トレンド内へと推移しているのが分かります。
下降トレンド内では、チャートレベルのダウ理論下降も成立してきていますが、
この場合もトレンド内のローソク足の陽線・陰線・ヒゲの長さには関係なく、
高値と安値同士を結んだ支持・抵抗ラインで形成されるトレンドの向きが下向きなので中期でのトレード相場では売り決済となります。
短期の投資の場合
では、トレンドをさらに小さくして最小限の3本の日足のローソク足を使って考えてみます。
この場合、デイトレードやスイングトレードのように、短期から中期(1日~10日前後)での投資期間の相場を考えた場合に有効となります。
前回同様に、考え方は同じです。
株価は、上向きである上昇トレンドを離れ、下向きの下降トレンド内へと推移していますので売り決済となります。
相場の期間の長さや、トレンドの大小に関係なく、そのトレンド内では、ローソク足の陽線、陰線、髭の長さも関係ありません。
トレンドは2つのローソク足の高値と安値を結んだ2本の支持・抵抗ラインで形成されます。
2つのローソク足を使って最小限にトレンドを小さくしていくと、トレンドを形成する支持・抵抗ラインからローソク足レベルダウ理論下降を形成していることが分かります。
トレンドとダウ理論の関係
※次がポイントです。
今度は、前回の真ん中のローソク足に色を付け陽線から陰線に変えてみます。
この場合も、トレンド内のローソク足の陽線・陰線・ヒゲの長さ、又は始値・終値に関係なく互いの高値と安値で定義されます。
右のローソク足の終値は前日に対して上昇していますが、トレンドの向きが上向きから下向きになりましたので売り決済になります。
同時に、ローソク足レベルでのダウ理論下降が成立しているのが分かります。
このことから、ローソク足レベルのダウ理論とは、2つのローソク足から成るトレンドの向きで決まり、この場合株価が終値で前日比に対し上昇していますが、売り決済と考えるのです。
これがローソク足のダウ理論の考え方です。
※同じダウ理論でも、チャートレベルとローソク足レベルがあるように、投資期間の長さや内容によって使われ方が違ってきます。
中長期での比較的に長い期間での投資トレードでは、相場を大きな目で考えることからチャートレベルのダウ理論を指標とすることが多いですが、
短期間での相場を読むための指標や実際のテクニカルトレードを行う場合としては、ローソク足レベルでのダウ理論を用いることが多くなり、
デイトレ-ドやスイングトレードのような日々の相場での、例えば今日・明日のポジションを考えるような場合に使うことで効果を発揮します。
※トレードに対してダウ理論のスパンを適切に考えることができるようになると投資家として一人前です。
>>次のページは
【ダウ理論・実践/応用編】
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